
ホームページのリニューアルは、デザインを新しくし、情報を整理し、企業の魅力をより伝わりやすくするための大切な機会です。
しかし、制作の過程で意外と見落とされがちなのが、「お客様がホームページをどう体験するか」という視点です。
見た目がきれいになっても、「使いづらくなった」「以前の方がわかりやすかった」と感じられてしまうケースも少なくありません。
今回は、サイトリニューアルで気づかれにくいお客様体験の変化と、その対策についてお伝えします。
デザインが良くなっても「使いにくくなる」ことがある
リニューアルの目的の多くは、「古くなった印象を変えたい」「今っぽいデザインにしたい」といった見た目の刷新です。
確かに、デザインの更新は企業イメージの向上につながります。
しかし、デザインを優先しすぎると、お客様の使い勝手が犠牲になることもあります。
たとえば、
- メニューが凝りすぎて、どこをクリックすればいいかわからない
- スクロールしないとボタンが見つからない
- アニメーションや動きが多く、読み込みが遅い
といったことが起きると、デザインが洗練されていても目的の情報にたどり着けないという不満につながります。
特に、リニューアル前から利用していたお客様にとっては、ボタンの位置や導線が変わるだけでも「使い方がわからなくなった」と感じる場合があります。
デザインだけでなく、「これまで使っていた人が困らないか?」という視点を持つことが重要です。
“伝えたい情報”を整理した結果、“見つけにくくなる”ことも
リニューアルでは、情報を整理してシンプルに見せるケースが多いですが、その過程で「よく見られていたページ」が削除されてしまうことがあります。
たとえば、
- 以前はトップページにあった「料金表」への導線が下層ページに移動した
- 「スタッフ紹介」や「会社の沿革」ページがなくなった
- 「お問い合わせボタン」がページの下にしかない
こうした小さな変更でも、お客様の行動導線に影響を与えます。
内部的には「不要なページを整理した」つもりでも、利用者にとっては「欲しい情報が見つからなくなった」という不便さにつながるのです。
リニューアルの際は、アクセス解析を確認してよく見られているページを残すことが大切です。
数字を見ると、想定外のページがよく閲覧されていることもあります。
社内の判断だけでなく、実際に見ている人の行動データを参考にすることが、見落とし防止につながります。
スマホでの“体験の差”に気づきにくい
今や、ホームページのアクセスの半数以上はスマートフォンからです。
それにもかかわらず、リニューアル検討時はPC画面での見え方ばかりをチェックしてしまうケースが多く見られます。
スマホでは、
- メニューが開きにくい
- ボタンが小さくて押しづらい
- 画像が多くて読み込みに時間がかかる
といった体験のストレスが起こりやすいのです。
見た目が同じでも、スマホでの操作感が悪ければ離脱率が上がります。
リニューアル時には、スマホでの操作検証を担当者自身が行うことが重要です。
実際に指で触れてみると、PCでは気づかない不便さが意外と見つかります。
社内目線とお客様目線のギャップ
企業の担当者にとって、ホームページは「会社を正しく理解してもらうための資料」のような存在かもしれません。
しかし、お客様にとっては「必要な情報を素早く得るためのツール」です。
たとえば、
- 企業側:「理念をきちんと伝えたい」
- お客様側:「信頼できる会社か、実績を見て判断したい」
- 画像が多くて読み込みに時間がかかる
このように、目的が微妙にずれていることが多いのです。
リニューアルでは、このギャップが広がりやすくなります。
担当者は「新しくして良くなった」と感じても、利用者にとっては「情報が遠くなった」と感じることがあるのです。
制作会社との打ち合わせでは、デザインや構成の話だけでなく、「この変更でお客様の行動はどう変わるか?」を意識して確認することが大切です。
“お客様体験”を見直す3つのポイント
リニューアル時にお客様体験を守るためには、以下の3つの視点を持つと効果的です。
たとえば、
- 現状の利用状況をデータで把握する
アクセス解析やお問い合わせデータを確認し、「よく見られているページ」「よく使われている導線」を把握する。 - 実際に操作してみる
PC・スマホの両方でテストし、ページ遷移のしやすさや表示スピードを体感的に確認する。 - 既存ユーザーの声を聞く
長く利用しているお客様やスタッフから、「使いにくくなった点」「良くなった点」をヒアリングする。
これらを行うだけで、リニューアル後の使いにくさをかなり防ぐことができます。
まとめ
ホームページのリニューアルは、見た目を変えるだけでなく、お客様がどう感じるかを再設計する場でもあります。
デザインや機能の改善に注目が集まりがちですが、実際にそのホームページを使うのはお客様です。
- 使いやすさが保たれているか
- 目的の情報にたどり着けるか
- スマホでも快適に見られるか
この3点を意識することで、見た目だけでなく体験として優れたホームページに進化させることができます。
リニューアルの本当の目的は「新しくすること」ではなく、「より多くの人に、より心地よく使ってもらうこと」。
その視点を持つことで、デザインも情報もお客様のためのホームページに生まれ変わります。